令和2年度化学物質安全対策(化管法・化審法に係る化学物質管理高度化推進事業)「呼吸活性を阻害する被験物質の濃度が生分解性試験とQSAR予測信頼性に与える影響の調査」報告書(公表用)

掲載日: 2021年9月17日
委託元: 経済産業省
担当課室: 製造産業局化学物質管理課化学物質リスク評価室
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令和2年度化学物質安全対策(化管法・化審法に係る化学物質管理高度化推進事業)「呼吸活性を阻害する被験物質の濃度が生分解性試験とQSAR予測信頼性に与える影響の調査」報告書(公表用)のサムネイル

報告書概要

この報告書は、化学物質の生分解性試験における呼吸活性阻害の問題について調査した研究報告書である。化学品の安全性評価において重要な生分解性試験では、OECD テストガイドライン301Cに基づき100mg/Lの濃度で評価を行うが、この濃度で微生物の呼吸活性が阻害される場合、実際には分解可能な物質でも難分解性と判定される問題が存在する。本調査では、静岡大学と製品評価技術基盤機構、化学物質評価研究機構が共同で、濃度変化による分解性への影響を明らかにすることを目的とした。研究では、まず分解対象物質の選定において、NITE保有の4276物質から301Cで難分解性だが他の試験で易分解性を示す物質を抽出し、微生物毒性試験結果も考慮してフェノール系化合物を中心に候補物質を決定した。次に、Pseudomonas putida KT2440株を用いて呼吸阻害の濃度依存性を評価し、抗生物質や3,5-ジクロロフェノールによる影響を解析した結果、増殖試験により阻害活性の検出が可能であることが確認された。さらに、初期濃度100mg/Lと30mg/Lでの生分解性試験を実施し、中間代謝産物の解析を行った結果、初期濃度の違いが分解経路に影響を与えるという重要な知見が得られた。具体的には、100mg/Lでは主に経路2で分解が進行してD4を生成し、30mg/Lでは経路1で分解が進行してD3を生成することが判明した。これらの異なる最終産物はDead end物質と考えられ、初期濃度が分解経路の選択に影響することが示された。本研究により、TG301Fの適用推進に向けた基礎データが取得され、化学物質判定の合理化への道筋が示されたが、今後は分解経路の違いが生じるメカニズムの詳細検討とQSAR適用の指標確立が課題である。