令和2年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(中東地域における経済社会情勢の変化を見据えた対応策の分析)
報告書概要
この報告は、中東地域における経済社会情勢の変化を見据えた対応策について書かれた報告書である。日本エネルギー経済研究所中東研究センターが経済産業省の委託を受けて実施した調査であり、2030年までの中東情勢を複数のシナリオで予測分析している。報告書は中東和平問題やイランのイスラーム革命から核兵器開発疑惑、ジハード主義のテロ、アラブの春とその後の情勢変化、脱炭素化の動きなど、中東地域の政治・安全保障・経済・社会情勢の現状を詳細に分析している。また、アラブ・イスラエル関係の新たな展開として、UAE、バハレーンとイスラエルの国交正常化であるアブラハム合意の意義と影響を検討している。脱炭素化については、世界的な石油離れが中東産油国に与える影響と、これらの国々が進める経済多様化戦略を分析している。シナリオプランニングの手法を用いて、2030年に向けたベストケースとワーストケースの両方を想定し、それぞれの場合における日本の対応策を提示している。経済面では、産油国の経済多様化、イスラエルとの協業による技術革新、デジタル・トランスフォーメーション分野での協力可能性について検討している。また、脱炭素化に関連してブルーアンモニアの製造・輸出、再生可能エネルギーの系統運用技術、国際的なCCSの実施、原子力発電分野での協力などの具体的な協力分野を提案している。日本企業にとっては、中東諸国の産業強化における協力パートナーとしての機会が拡大する一方、各国間の誘致競争も激化すると予測されている。