令和2年度補正産業保安高度化推進事業(防爆ドローンの要件に関するガイドラインや仕様設計等の調査)調査報告書
報告書概要
この報告書は、プラント内における防爆ドローンの要件に関するガイドライン策定のための調査について書かれた報告書である。
石油精製・石油化学等のプラントにおけるドローン活用は、高所点検や災害時の迅速な点検を可能にし、保安力向上や労働災害撲滅に繋がることが期待されている。しかし現在、プラント内の爆発性雰囲気が存在する危険区域では、労働安全衛生法により防爆型式検定に合格した電気機械器具の使用が義務付けられているものの、ドローンの防爆性能に係る技術的要件や試験方法は確立されておらず、防爆対応のドローンは存在しない状況である。
産業技術総合研究所が主体となり、プロドローン、三菱重工業と連携して調査を実施し、8名の専門家による委員会を設置した。関連法令として航空法、電波法、労働安全衛生法等を調査し、プラントにおけるドローンの安全運用ガイドラインや危険区域設定ガイドラインとの整合性を検討した。ユースケース調査では、プラント内はゾーン2の箇所がゾーン1より広く、ゾーン2での利用ニーズが多いことが判明した。
防爆構造については、ゾーン2用とゾーン1用に分けて検討し、モーター、バッテリー、カメラ等の主要部品ごとに防爆要件を整理した。海外調査では既存の防爆ドローンの開発・販売状況やIECEx認証モーターの状況を調査した。また、防爆機器の衝撃試験と帯電試験を実施し、落下時の防爆性能維持についても検証を行った。
現存する防爆指針では高所からの落下リスクが考慮されていないため、新たなリスク評価基準の整備が必要であることが明らかになった。落下を考慮した安全性確認要件として、衝撃火花対策や特殊防爆構造の適用可能性についても検討を行った。今後の課題として、モーターの軽量化、墜落時の周囲構造物への影響軽減、粉塵対応防爆構造の検討等が挙げられた。本調査により、防爆ドローンの開発・実装に向けた技術的指針が整備され、プラントの安全性向上と効率的な点検業務の実現に向けた道筋が示された。
