令和2年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(デジタル人材政策に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省が令和2年度に実施したデジタル人材政策に関する調査について書かれた報告書である。
デジタル技術の急速な発展により、我が国では Society5.0 の実現に向けてデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが重要課題となっている。この社会変化に対応するため、企業や個人の学び方、人材活用の仕方に大きな変化が求められており、新たなデジタル時代に即した人材政策の方向性について検討が実施された。
調査は文献調査、有識者や企業へのヒアリング調査、デジタル時代の人材政策に関する検討会の開催、今後の調査事項の整理という四つの柱で構成されている。文献調査では、我が国におけるデジタル化の進展とデジタル人材の動向、IT人材のリスキル、採用・雇用動向、能力・スキルの見える化、情報処理技術者試験の現状について調査が行われた。ヒアリング調査では、デジタル技術・人材に関する有識者、デジタル人材の採用や既存人材のリスキルに取り組む企業、資格試験実施団体等に対して計21件の聞き取りが実施された。
調査結果から、デジタル人材の育成・確保が進まない要因として、企業における DX の必要性に対する経営者の認識不足、IT ベンダーの受託開発型・人材派遣型ビジネスからの脱却の遅れ、人材市場における流動性の低さ等のマクロ的課題が挙げられている。また、リスキリングの遅れや実践的な学びの場の不足、DX に必要な具体的スキルが不明確であることによる能力の見える化や評価の困難さ等のミクロ的課題も指摘されている。
これらの課題の根本的要因として、我が国では既存ビジネスの効率化に経営の力点が置かれ、ITが「既存ビジネスの効率化・改善の道具」として位置づけられてきたことが、デジタル人材への高処遇や育成・確保の取り組みに対するインセンティブを生みにくい背景となっている点が重要である。今後求められるDXにおいては、デジタル技術によるビジネスの創造・革新に経営の力点が置かれ、IT自体が「ビジネス創出・革新の武器」となるため、デジタル人材に対する高処遇や育成・確保に対するインセンティブが生じると期待される。
今後の方策として、デジタル人材の育成・確保と DX の遅れという2つの課題の解決に向けた取組が同時に進む好循環を形成することが重要であると結論づけられている。
