令和2年度質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(インフラシステム輸出・新戦略検調査事業)

掲載日: 2021年10月8日
委託元: 経済産業省
担当課室: 貿易経済協力局貿易振興課
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報告書概要

この報告は、日本のエネルギー・デジタル分野のインフラ海外展開戦略について書かれた報告書である。

従来の日本の技術や製品を一方的に輸出する手法から、相手国との「価値共創」へと方針転換することが中核的な提言となっている。エネルギー分野においては、アジア各国の急激な需要増加に対応するため、再生可能エネルギーと系統柔軟性の確保、ゼロエミッション火力発電技術の開発、アンモニアや水素混焼といった新技術の実用化が重要な課題として位置づけられている。特に現実的な脱炭素化のロードマップとして、各国の事情に応じた既存技術の活用と段階的な転換が必要であるとされている。

デジタル分野では、データ共有プラットフォームの構築が最重要課題として挙げられ、競争領域と共創領域のデータを明確に区分し、官民一体でデータ共有の仕組みづくりを進めることが提案されている。現地のスタートアップとの連携により、各国固有のニーズを汲み取りながら、日本の社会課題解決ノウハウを海外展開する戦略が示されている。

価値共創の実現には、日本企業や行政の組織構造変革が不可欠であり、ウォーターフロー型からアジャイル型への転換、部門横断的な政策立案体制の構築が求められている。デジタル庁には社会デザインの再設計という新たな役割が期待され、「最大多様の最大幸福」社会の実現に向けたビジョン策定が必要とされている。

従来のKPI評価についても見直しが提言され、単純な輸出額ではなく、現地への教育提供度や無医村地域削減度、CO2削減量など、相手国のSDGs貢献度合いを多様な評価軸で測定することが重要であるとされている。最終的には「インフラシステム輸出戦略」から「インフラシステム海外展開戦略」へと名称変更し、共創による価値創造を軸とした新たな戦略展開が目指されている。