令和2年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(ASEAN諸国等における無電化/弱電化地域及び島嶼部への分散型スマートインフラ導入マスタープラン策定及び水平展開に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、ASEAN諸国等における無電化・弱電化地域及び島嶼部への分散型スマートインフラ導入マスタープラン策定及び水平展開について書かれた報告書である。
ASEAN諸国の新興国における村落部や島嶼部では、急速な都市化と中間層の拡大により生活水準向上ニーズが顕在化している。これらの地域では旧式のディーゼル発電機による発電が主力となっており、発電コストが高額で環境負荷も高いため、再生可能エネルギーの導入が期待されている。しかし、大きな系統と接続するためには山間や海底送電線の設置コスト等により採算性が取れない場合が多い状況である。
本調査では、ミャンマーを対象国として選定し、将来的にはASEAN諸国への展開を図る方針である。ミャンマーを選んだ理由は、双日が出資している通信タワー事業者edotcoの存在、電化率の低さ、そして政府の開発意欲の高さである。調査では、太陽光や風力等の再生可能エネルギーと蓄電池、スマートメーター等の遠隔監視システムを組み合わせたマイクログリッドシステムの導入可能性を検討した。
通信網整備については、edotcoの通信タワー事業を基盤として、ディーゼル発電機から再生可能エネルギーへの転換を提案している。また、デジタルインフラを活用した生活水準向上サービスとして、遠隔教育のパイロット事業を実施し、実証実験を通じて事業性を評価した。パイロット事業では、すららE-ラーニングシステムを活用した遠隔教育を実施し、参加児童の学習成果向上を確認した。
事業性評価では、マイクログリッド事業のコストシミュレーションや収益モデルの構築を行い、初期投資回収の可能性を検証した。また、料金徴収システムの提案も実施している。提案マスタープランは、電力、通信、社会開発が複合的に関連する包括的な取り組みであり、既存の地方開発政策の連携課題を解決する可能性を有している。
ASEAN諸国への水平展開については、各国の電化率や通信インフラの整備状況を調査し、ラオス、フィリピン、インドネシア等での展開可能性を評価した。最終的に、国際機関との連携を通じて、脱炭素やSDGsの国際的潮流と親和性の高い取り組みとして、アジア地域さらには南アジアやアフリカへの展開可能性を示している。