令和2年度原子力の利用状況等に関する調査事業(諸外国における原子力イノベーションの動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、諸外国における原子力イノベーションの動向について書かれた報告書である。令和2年度に日本エヌ・ユー・エス株式会社が実施した調査事業として、革新的原子炉の実証炉建設に向けた国際的な動向と実用化に向けた技術開発について詳細に分析している。
米国では原子力規制委員会による規制整備が進められ、NuScale、TerraPower、X-Energyなどの革新的原子炉の開発が活発化している。カナダではカナダ原子力安全委員会がSMR規制枠組みを構築し、複数の事業者が実証プロジェクトを推進している。英国ではRolls-Royce社のUK-SMRプロジェクトが政府支援を受けて進展し、一般設計評価制度による規制体制が整備されている。フランスではEDF社主導でNUWARD小型炉の開発が進められ、CEAがASTRID高速炉プロジェクトを推進している。中国では石島湾原子力発電所でHTR-PM高温ガス炉の商業運転が開始され、CFR-600高速炉の建設が進行している。ロシアではBREST-OD-300鉛冷却高速炉とMHR-100高温ガス炉の開発が継続されている。
技術開発面では、ARPA-EのMEITNERとGEMINAプログラムにより、負荷追従機能、デジタルツイン技術、AI予知保全システムなどの革新技術が開発されている。英国の先端製造・材料プログラムでは3Dプリンティング、電子ビーム溶接、モジュール建設技術が実証されている。経済性向上技術として水素製造、海水淡水化、負荷追従運転などの多目的利用技術が注目されている。各国とも発電税額控除、ゼロエミッションクレジット、規制資産ベースモデルなどの支援制度を整備し、SMRの事業性向上を図っている。
