令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(太陽光発電に係る保守点検・保険の動向等に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、太陽光発電事業者の保険加入状況と保険商品の実態、また保険加入促進に向けた制度的課題について書かれた報告書である。
令和2年度に実施された本調査では、再生可能エネルギー固定価格買取制度の開始以降急速に拡大した太陽光発電設備について、災害等による損壊や撤去に備えた保険加入の実態を詳細に調査した。経済産業省が2020年4月に火災保険や地震保険等の加入について努力義務を課したことを受け、特に低圧発電設備を中心とした保険未加入事業者の状況把握を目的としている。
調査方法は、全国5,500件の太陽光発電事業者を対象としたアンケート調査、保険未加入事例のヒアリング、実際の発電所への現地調査、保険会社への商品内容調査という多面的なアプローチを採用した。アンケートでは498件の回答を得て、保険加入率は全体で約9割に達し、平成29年度調査時の低圧68%から大幅に向上していることが判明した。また保険加入努力義務の認知度も82%と高水準であった。
保険商品の実態調査では、損害保険会社3社への詳細なヒアリングを通じて、財物保険、利益保険、第三者賠償保険、地震保険の適用範囲や加入条件を明確化した。特に廃棄費用の補填範囲や第三者損害賠償保険の対象範囲について具体的な検証を行った。さらに低圧2件、高圧2件の実地調査と特別高圧2件のケーススタディにより、実際の保険金支払実績と事故対応状況を詳細に分析した。
保険加入促進策として団体保険の活用可能性を検討し、一般社団法人等による団体保険組成に制度的障害がないことを確認した。既存団体保険の太陽光発電事業への適用拡大や新規団体保険組成の検討課題を整理し、保険料低廉化と手続き支援の重要性を示した。また自転車保険等の他の義務保険制度を参考に、地方公共団体による条例制定を通じた保険加入促進の可能性を検討した。
今後の課題として、より精度の高い保険加入状況把握のため固定価格買取制度の定期報告を活用した補足方法の検討、団体保険や付帯保険の活用促進、地方公共団体の条例による保険加入促進支援が提言されている。特に都道府県・市町村による情報提供体制の整備や、太陽光発電に関する保険加入の標準条例作成の可能性について具体的な検討項目が示されている。
