令和2年度化学物質安全対策(化管法・化審法に係る化学物質管理高度化推進事業)リスクベースの視点に基づく化学物質管理のあり方 調査報告書
報告書概要
この報告は、リスクベースの視点に基づく化学物質管理のあり方について書かれた報告書である。化学物質管理における共通尺度を志向した枠組み構築を目的とし、政府・産業界・地域の三つの視点から化学物質管理の最適化を検討している。
研究は三つの主要課題から構成されている。第一の課題では、自己組織化マップを用いてPRTR対象化学物質の分類を行い、化学物質地図を作成している。この分析により、類似する化学物質群の特定と未評価物質の分類予測が可能となり、化審法リスク評価の迅速化に寄与する知見が得られた。定量的構造活性相関モデルの構築により、in silicoによるリスク評価手法の実用性も検証されている。
第二の課題では、PRTR対象物質の排出量変化要因を産業連関構造分解解析により解明している。2001年から2015年のデータ分析を通じて、産業界の自主的取組による排出削減効果を定量化し、化学フットプリント指標による環境影響評価を実施している。この手法により、排出量削減の環境的価値を業種別に相対評価することが可能となった。
第三の課題では、ノニルフェノールエトキシレートを対象とした費用便益分析を実施している。日光川、大久川、尻無川における水生生物への曝露解析を通じて、排出源別の感度解析と削減効果の定量評価を行っている。代替物質導入費用を考慮した費用対効果分析により、効率的な排出削減戦略の提案が可能となっている。
研究成果として、化学物質管理における規制と自主管理のベストミックス実現に向けた具体的方法論が提示されている。世界共通尺度による化学物質管理の推進、産業界の自主的取組の定量的評価、地域レベルでのリスク管理戦略立案に資する知見が構築されている。これらの成果は、持続可能な化学産業の発展と効果的な化学物質管理政策の実現に貢献するものである。
