令和2年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費サウジアラビア王国・CO2 to Chemical生成事業実施可能性調査事業 報告書【公表版・日本語】
報告書概要
この報告は、サウジアラビア王国におけるCO2 to Chemical(CO2からメタノール)生成事業の実施可能性について調査した報告書である。
本調査は、サウジアラビアが推進する「Circular Carbon Economy」政策の一環として、石油化学プラントや油井から排出されるCO2を化学品の原材料であるメタノールに変換する技術の商業化可能性を検証したものである。調査では、三井物産と野村総合研究所が共同で、メタノール市場分析、技術要素の検討、経済性分析、事業実施体制の検討を実施した。
技術面では、再生可能エネルギーによる水の電気分解で水素を製造し、CO2と反応させてメタノールを生成する方式を検討した。プラント規模は年間10万トンのメタノール製造を基本とし、水素製造設備、メタノール合成設備、太陽光発電設備から構成される統合システムを設計した。特に、RITE開発触媒の活用や三井化学での実証試験結果を踏まえた技術選択を行い、東洋エンジニアリングのMRF-Z反応器技術を採用した概略設計を完成させた。
経済性検討では、2つのケースで分析を実施した。ケース1は太陽光発電設備を併設する方式、ケース2はグリーン証書電力を活用する方式である。設備投資費用(CAPEX)と運営費用(OPEX)を詳細に算定し、内部収益率(IRR)による経済性を評価した結果、現状の技術・価格水準では商業ベースでの収益性確保は困難であることが判明した。しかし、規模を年間100万トンに拡大し、電解設備コストの低減や証書電力価格の適正化が実現すれば、通常のメタノール市場価格と同等水準での製造が可能となる見通しを示した。
サウジ側カウンターパートとは2021年1月から6月にかけて20回の週例ワークショップを開催し、技術仕様、立地条件、経済性について継続的な協議を実施した。サウジ側からはCO2処理手段としてのメタノール製造に対する前向きな反応を得ており、今後の実証プラント建設に向けた継続検討への合意を取得した。今後は2022年度の実証プラントFS実施、2023-24年度の建設、2025-26年度の運営検証を経て、2027年度からの本格展開を目指すスケジュールを策定し、商業化に向けた具体的な道筋を明確化した。
