令和2年度産業経済研究委託事業 企業の雇用状況等に関する調査研究報告書
報告書概要
この報告は、令和2年度に実施された企業の雇用状況と賃金動向について書かれた報告書である。新型コロナウイルス感染拡大の影響下で、ウィズコロナ・ポストコロナ時代における企業の雇用・働き方の在り方や人材育成に関する政策検討を目的として、上場企業と中小企業を対象とした包括的な調査が行われた。労働市場の現状分析では、有効求人倍率が2020年に一時的に1.0倍近くまで低下し、完全失業率も3%を超えたが、リーマンショック時と比較して調整幅は小さく抑えられた。企業規模別の人員DI分析では、2019年まで中堅・中小企業で顕著であった人手不足感が2020年に急激に弱まったことが判明した。上場企業調査では、賃上げ・生産性向上のための税制利用実績、人員計画、給与動向、教育訓練、リモート勤務の実態などが詳細に分析された。中小企業調査では、給与・賃金の引上げ状況、最低賃金引上げの影響、所得拡大促進税制の利用状況、働き方改革の取組み状況が明らかにされた。特に新型コロナウイルスの影響については、企業の経営状況悪化、人員計画の見直し、勤務制度の変化などが具体的に調査された。賃上げ状況の分析では、すべての企業規模で「企業の業績」が賃金改定の最重要要素となっており、中小企業では「雇用の維持」も重視されていることが示された。調査結果から、企業の雇用維持と事業継続、経済構造転換を見据えた人材育成支援の重要性が政策課題として浮き彫りになった。
