令和2年度重要技術管理体制強化事業(対内直接投資規制対策事業(諸外国における投資環境動向調査))報告書

掲載日: 2022年2月22日
委託元: 経済産業省
担当課室: 貿易経済協力局貿易管理部安全保障貿易管理政策課 国際投資管理室
委託事業者: ホワイト&ケースLLP
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令和2年度重要技術管理体制強化事業(対内直接投資規制対策事業(諸外国における投資環境動向調査))報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、先進諸国における対内直接投資規制の動向について調査した報告書である。令和2年度に実施された本調査は、我が国の資本移動規制のあり方及び運用指針の検討を目的として、米国、カナダ、欧州連合、ドイツ、フランス、イタリア、英国、オーストラリアの8か国・地域における投資管理制度を詳細に分析している。

近年の国境を越えた企業買収の増加や政府系ファンドの台頭により、世界の投資環境は大きく変化しており、欧米諸国を中心に投資管理規制の強化が進んでいる。特に、対内直接投資を通じた民生技術の軍事転用や技術流出への懸念が高まる中、各国は国家安全保障の観点から新たな投資規制制度の構築を進めている。

米国では2018年外国投資リスク審査現代化法により、対米外国投資委員会の権限が大幅に拡大され、支配権を伴わない投資や不動産取引も審査対象となった。重要技術、重要インフラ、機微個人情報に関わる事業への外国投資について、より厳格な審査体制が確立されている。カナダでは投資カナダ法に基づく外資規制が実施され、国家安全保障審査の強化が図られている。

欧州連合では2019年に対内直接投資審査規則が施行され、加盟国間の協力体制が構築された。ドイツ、フランス、イタリアなどの主要加盟国では、それぞれ独自の外資規制制度を運用しており、審査対象の拡大や手続きの厳格化が進んでいる。英国では2021年国家安全保障投資法が制定され、新たな投資審査制度が導入された。オーストラリアでも外国投資政策の見直しが継続的に行われ、国家安全保障リスクへの対応が強化されている。

各国の制度には共通の特徴として、審査対象の拡大、届出義務の強化、罰則の厳格化が見られる。また、重要技術や重要インフラに対する外国投資への監視が強化され、国家安全保障を理由とした取引の禁止や条件付承認の事例が増加している。これらの動向は、我が国の外資規制制度の今後の在り方を検討する上で重要な参考となるものである。