令和2年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費(国境調整措置に係る調査・分析)成果報告書

掲載日: 2022年3月10日
委託元: 経済産業省
担当課室: 産業技術環境局地球環境対策室
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令和2年度地球温暖化・資源循環対策等に資する調査委託費(国境調整措置に係る調査・分析)成果報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、EUの国境炭素調整措置に関する検討・分析について書かれた報告書である。

EUは2030年目標の温室効果ガス削減率を90年比55%に引き上げることに伴い、カーボンニュートラル達成、競争力強化とカーボンリーケージ対策、独自財源化を目的として国境炭素調整措置の導入を検討している。フォンデアライエン欧州委員会委員長が2019年10月にグリーンディールの一環として同措置に言及して以降、2020年3月に開始影響評価を実施し、2021年6月の提案、2023年1月の導入を視野に入れた制度設計が進められている。

同措置はコロナ禍対応の復興基金返済財源としても期待されており、欧州委員会は最低50億ユーロの収入を試算している。制度設計については、炭素税、新規炭素関税、EU排出量取引制度の拡大という3つの政策オプションが検討され、カーボンリーケージリスクが最大のセクターを対象とする方針が示されている。

パブリックコンサルテーションでは産業界の反応が分かれ、欧州鉄鋼協会や欧州セメント協会は無償割当に加えて国境炭素調整が必要との立場を示している一方、ドイツ産業連盟は報復措置による貿易戦争を警戒している。各国の反応については、米国では気候危機特別委員会がカーボンプライシングの5原則を提示し、フランスとドイツは仏独共同宣言で同措置への支持を表明している。

日本への影響については、報道で対象の可能性が示唆される鉄鋼分野では欧州が日本の主要貿易相手国ではないものの、自動車部品等への拡大時には注意が必要とされている。貿易戦争回避のためWTO整合性や計測バウンダリーについての国際合意が不可欠であると結論付けられている。