令和2年度新興国等におけるエネルギー使用合理化等に資する事業(バルト三国の再生可能エネルギー大量導入促進及び欧州電力系統同期化に向けた需給調整能力確立に関する事業)調査報告書

掲載日: 2022年3月10日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課国際室
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和2年度新興国等におけるエネルギー使用合理化等に資する事業(バルト三国の再生可能エネルギー大量導入促進及び欧州電力系統同期化に向けた需給調整能力確立に関する事業)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)における再生可能エネルギー大量導入と欧州電力系統同期化に向けた電力系統の需給調整能力確立について書かれた報告書である。バルト三国は現在、旧ソ連系統との同期から大陸欧州系統への同期化を進めており、2025年までに完了予定となっている。同時に、再生可能エネルギーの大量導入により従来の同期発電機が減少し、系統慣性の低下が技術課題となっている。系統慣性の低下は周波数変化率の増大を引き起こし、電力供給の安定性に深刻な影響を与える可能性がある。

この問題に対処するため、疑似慣性応答機能を持つバッテリー蓄電システム(BESS)や高電圧直流送電(HVDC)の導入効果をシミュレーション分析により検証した。Grid forming型BESSは従来のGrid following型より優れた周波数安定化効果を示し、HVDCへの周波数制御機能追加も有効であることが確認された。検討対象年度2050年における電源構成を想定し、風力発電や太陽光発電の大幅な増加に対応する技術的解決策を評価している。

経済分析では費用便益比較を実施し、疑似慣性応答機能付き設備の導入コストと便益を定量化した。また、バルト三国の電力セクター調査により、各国の再生可能エネルギー政策、送電系統の現状、市場開放状況を詳細に分析している。エストニアは油母頁岩火力からの脱却、ラトビアは水力発電の活用、リトアニアは原子力発電所閉鎖後の電源多様化がそれぞれの課題である。

提言として、送電系統へのBESS導入、HVDC linkへの周波数制御機能具備、風力・太陽光発電所へのBESS併設、HVDCの技術要件設定が挙げられている。これらの対策により、再生可能エネルギー大量導入時代における電力系統の安定性確保と欧州系統同期化の両立が可能となる。