令和2年度燃料安定供給対策に関する調査(製油所の競争力に係る技術動向に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、日本の石油産業の国際競争力強化を目的とした燃料安定供給対策に関する総合的な技術動向調査について書かれた報告書である。
令和2年度に実施された本調査は、日本の石油安定供給を将来にわたり確保するため、国内製油所等の供給インフラを経済合理的かつ効率的に維持することを目的としている。国内石油需要減少という厳しい経営環境において、日本企業の国際競争力強化が急務となる中、特に原油調達の中東依存リスクと気候変動面での社会的要請に係る経営リスクが重要な課題として認識されている。
調査内容は、主要な4つの分野で構成されている。第一に、日本の原油多角化に向けた諸外国の原油輸入先及び油種構成に関する調査では、中国、韓国、インド、米国、フランス、オランダ、イタリアなどの主要原油輸入国における輸入先の推移と背景、製油所設備構成や製品得率の変化について詳細な分析が行われた。これらの調査を通じて、輸入原油の変化に対応した製油所装置の新設や改造、精製技術の発展について分析し、原油輸入先多角化が石油企業の国際競争力に与える影響を定量的に評価している。
第二に、バイオリファイナリーの導入及び事業戦略等に関する調査では、既存製油所をバイオ原料等の非化石資源を原料とするバイオリファイナリーへ転換する技術について検討された。ENIやNESTE等の先進企業における導入事例を分析し、バイオリファイナリーが成立する社会的要因や事業戦略の違い、ESG評価への影響について比較検討が実施された。さらに、原料調達・精製・販売の各段階における事業環境の違いを考慮したコスト評価と課題分析により、国内製油所への導入可能性が検討されている。
第三に、国際競争力強化に資する技術・事業動向調査では、ガソリン需要減少に伴う余剰基材のケミカル原料化に係る最適化・効率化技術や、原油から最大限ケミカル原料を得るCrude Oil to Chemicalsプロセスの導入課題が分析された。また、AI/IoT技術等の最新テクノロジーを活用したサプライチェーン全体の最適化・効率化技術についても、海外企業の研究開発や導入実績を踏まえた調査が実施されている。第四に、海外主要国の競争力に関する石油精製技術動向等調査では、欧州、米国、アジア各国における精製技術及び石油精製・石油化学設備への投資状況の最新動向が継続的に調査された。
