令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(2050年を見据えたガス事業の在り方に関する委託調査)報告書
報告書概要
この報告は、2050年に向けた我が国のガス事業の在り方について包括的に分析した調査報告書である。報告書では、脱炭素化の進展、自然災害の頻発化、国際LNG需給構造の変化、少子高齢化による需要変化、デジタル化の進展といったガス事業を取り巻く急速な環境変化を踏まえ、諸外国の政策動向と事業者戦略を詳細に調査している。
我が国のガス事業は2017年の小売全面自由化により競争が進展したものの、世界規模でのCO2削減要請とエネルギー安定供給確保の両立が求められる中、従来の単純なガス供給事業の継続は困難になる可能性があることが指摘されている。そのため、環境適合としての低炭素化・脱炭素化、安定供給としてのレジリエンス強化、経済効率としての経営基盤強化の三つの観点からの高度化が必要とされる。
国際ガス市場では、我が国のLNG輸入量は年間7,730万トンに達し、調達先は豪州が最大で38.9%を占め、中東依存度は17%程度と原油に比べて多角化が進んでいる。諸外国では、欧州を中心に水素・メタネーション技術やCCS/CCUS、デジタル化への投資が積極的に行われており、特にドイツやオランダでは水素供給ネットワークの構築計画が具体化している。
我が国のガス事業者に対するアンケート調査では、地域活性化、脱炭素化、防災・レジリエンスがガス事業者に期待される主要な役割として挙げられた。SDGsへの取り組みについては95%の事業者が認知しているものの、実際に取り組んでいる事業者は22%に留まっている。今後、ガス事業者は地方自治体との連携を重視しながら、カーボンニュートラル社会の実現に向けた新たな事業モデルの構築が急務である。
