令和2年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた調査事業)報告書―医療分野におけるキャッシュレス決済の普及促進パート―
報告書概要
この報告は、医療分野におけるキャッシュレス決済の普及促進について書かれた報告書である。政府は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度とする目標を掲げており、これまで十分にキャッシュレス化が進んでいない医療機関での導入推進が重要な課題となっている。医療機関におけるキャッシュレス化は患者の利便性向上や医療サービス向上、業務効率化につながるものの、普及が十分に進んでいない状況である。主要な阻害要因として、医療機関にとっての決済手数料負担の問題が挙げられており、その他にも医療業界における特殊な事情やそれに起因した課題が存在している。国内の医療機関におけるキャッシュレス決済の導入事例として、東京大学病院、慶応大学病院、厚生中央病院など多数の病院がクレジットカード決済やQRコード決済、スマホアプリを活用したサービスを導入している。これらの導入により、患者にとっては会計時の利便性向上、医療機関にとっては業務効率化や待ち時間解消といったメリットが実現されている。費用対効果分析では、決済額に占める決済費用等の比率を検証した結果、医療機関がキャッシュレス決済手数料を負担する場合でも、キャッシュレス決済の方が現金決済よりも低い傾向が確認された。しかし、全ての医療機関でキャッシュレス決済が費用面で効果的であるとは限らないため、決済手数料の負担者をどうするかが重要な課題となっている。負担者の在り方として、患者負担とする場合と医療機関負担とする場合の2通りが考えられるが、いずれの場合も具体化に向けた更なる検討が必要である。今後のキャッシュレス推進には、関係省庁、医療機関、決済事業者の3者が同意できる仕組みを構築し、費用対効果の見える化や医療機関側での取組の具体化を進めることが求められる。
