令和2年度産業経済研究委託事業(会計システム等の蓄積データの統計調査への活用に関する調査研究)調査報告書
報告書概要
この報告は、企業の会計システムに蓄積されたデータを政府統計調査に活用する方策について書かれた報告書である。政府統計調査における企業の記入者負担軽減と効率化を目的として、市販会計システムとの連携可能性を検討した調査研究の成果をまとめている。現在、企業活動基本調査などのオンライン回答率は低水準にとどまっており、企業が使用する会計システムに保有されるデータを統計調査に活用できれば、調査票への転記事務が不要となり大幅な負担軽減が期待できる。調査では、国内で流通する19社の会計システムベンダーについて、企業規模別の導入状況、e-Tax・eLTAX・EDINETとの連携機能、データ保有方法等の実態を把握した。また、統計調査対象企業への実態調査により、会計システムの利用状況と統計作成に要する事務コストを分析している。統計調査項目と会計システム保有データの一致度検証では、日本標準産業分類や生産物分類等の政府統計コードと企業の個社コードとの変換方法を4つのパターンに分類し、具体的なコンバート手法を提示した。システム連携の実現案として、API連携やファイル連携等の複数の技術的手段を比較検討し、開発コストや実装難易度を評価している。統計調査との連携機能を有する会計システムの市場成長性については、需要と供給の両面から分析し、普及に向けたインセンティブ設計や段階的な導入方法を提案した。さらに、調査対象者側と統計調査実施者側双方における事務コスト削減効果を定量的に試算し、システム導入による費用対効果を明示している。最終的に、令和3年度からの実証実験実施に向けた具体的なスキーム案とロードマップを策定し、3年間での本格運用開始を目標とした段階的導入計画を示している。