令和2年度産業経済研究委託事業(我が国事業会社とスタートアップによるオープンイノベーションを通じた産業競争力強化に関する調査研究)報告書
報告書概要
この報告は、我が国事業会社とスタートアップによるオープンイノベーションを通じた産業競争力強化について書かれた報告書である。令和2年度に創設されたオープンイノベーション促進税制の実態調査と国内外スタートアップ企業のExit環境について調査研究を行った結果をまとめている。
オープンイノベーション促進税制は、国内対象法人がスタートアップ企業の株式を取得する場合に取得価額の25%を課税所得から控除できる制度であり、初年度となる2021年3月時点で105件・356億円の相談案件があり、うち63件・231億円がオープンイノベーション要件を満たしていることが確認された。大企業による申請が全体の84%を占め、情報通信業、金融・保険業、サービス業が主要な申請業種となっている。
調査結果では、同税制がウィズコロナ期における事業会社のスタートアップ向け投資を下支えし、資金供給面で一定の成果を上げたことが判明している。しかしながら、技術開発から実装までのスパンが短縮化される中、マイルストーン投資だけでなく買収を促進する支援も必要であるが、日本では2018年以降買収件数が半減している状況が明らかとなった。また、事業会社はコロナの影響で内部留保を積み増す傾向を強化しており、資金以外の経営資源供給も必ずしも活発ではないという課題が顕在化している。国内スタートアップ企業のExit環境についても、IPOを視野に入れる企業が多いにも関わらず、国内IPOは横ばいで推移している。その要因として、ブックビルディング方式により公開価格が低く設定される傾向があり、初期収益率が100%以上と高く、上場企業にとって経済損失を伴っている状況が指摘されている。
