令和2年度産業経済研究委託事業(新株予約権型投資手段等を通じたスタートアップ投資及びオープンイノベーションの推進を通じた我が国企業の産業競争力強化に関する調査研究)調査報告書

掲載日: 2022年5月20日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局産業創造課
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令和2年度産業経済研究委託事業(新株予約権型投資手段等を通じたスタートアップ投資及びオープンイノベーションの推進を通じた我が国企業の産業競争力強化に関する調査研究)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、新株予約権型投資手段等を通じたスタートアップ投資及びオープンイノベーションの推進について書かれた報告書である。

新型コロナウイルス感染症の影響により市場環境の不確実性が増大する中、スタートアップは新たな日常への適応を迫られ、投資家は投資判断により慎重になっている状況が生じている。このような課題を解決する手段として、転換価額の算定式のみを設定し将来企業価値評価の正確性が高まったタイミングで株式転換を行う「コンバーティブル投資手段」の有効性に着目している。

我が国のスタートアップ資金市場には、シード期スタートアップに対する資金供給が未成熟である課題が存在する。2018年のシード期スタートアップへの投資額は日本が約560億円であったのに対し、米国は約1.3兆円に上り、約23倍の開きがある。シード期スタートアップの多くはプロダクト・マーケット・フィット未確立段階にあるため、将来の企業価値を合理的に定めることは本質的に困難を伴い、拙速な評価により過少評価・過大評価のリスクが生じている。

コンバーティブル投資手段は、投資家が株式取得に先立って資金供給を行い、将来企業価値評価の正確性が高まったタイミングで株式転換を行う新株予約権等の投資手段である。この手段により、企業価値評価の先延ばし、迅速なファイナンスの実現、柔軟なインセンティブ設計が可能となる。米国シリコンバレーのシード期調達では約半数がコンバーティブル投資手段によるものであり、日本でも有償新株予約権型の利用が拡大している。

オープンイノベーション創出に向けたアイデア実証における活用についても検討されており、企業価値評価を回避しつつ提携先の成長を取り込み、双方のコミットメントを強化することが可能である。一定の業務上のマイルストーンを転換トリガーとする等、インセンティブを柔軟に設計できる特徴がある。

本報告書では、コンバーティブル投資手段に関する研究会での議論を踏まえ、実務処理の解説や適切な利用に向けた交渉ポイント、実態調査に基づく相場水準等を含むガイドラインを策定し、我が国におけるコンバーティブル投資手段の普及促進を目指している。