令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(ディマンドリスポンスの更なる活用に向けた実態等調査)報告書

掲載日: 2023年4月21日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部新エネルギーシステム課
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令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(ディマンドリスポンスの更なる活用に向けた実態等調査)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、再生可能エネルギーの大量導入に伴う電力系統の調整力不足問題に対応するため、ディマンドリスポンス(DR)を活用した需要側リソース(DSR)による高速調整力の供出可能性について調査した報告書である。

現在、日本の需給調整市場では再生可能エネルギーの予測誤差に対応する三次調整力②の調達不足が慢性化しており、調達費用も想定を上回る規模で増加している。これまで大型火力発電所が担ってきた周波数調整機能を、市場経由で分散的に調達する必要性が高まっている中、より効率的かつ即効性のある調整力調達が急務となっている。

本調査では、特別高圧供給を受ける大型工場やコンビナート等を対象として、一次調整力(R1)および二次調整力(R2)の供出可能性を検証した。具体的には、山梨県の米倉山サイト(水電解装置)、山口県の徳山サイト(食塩電解設備)、神奈川県の川崎サイト(空気圧縮機)の三箇所において、受電点計測と機器点計測の両方で手動テストを実施し、フランスRTEの基準に準拠した評価を行った。

検証結果として、米倉山サイトの水電解装置は受電点・機器点ともにR1供出が可能であることが確認された。徳山サイトの食塩電解は、機器点であれば10秒応動で100kW程度、30秒応動で300kW程度のR1供出可能性を確認したが、川崎サイトの空気圧縮機ではR1供出は現実的でないことが判明した。R2については、米倉山サイトは問題なく、徳山サイトは機器点では供出可能、川崎サイトは困難という結果となった。

さらに、調整力供出時のベースライン設定についても検討を行い、現行規定である「落札ブロック5分前平均値」に加えて、「実需給の5分前からの平均値」を採用することを提案している。周波数変動の周期が3~4分程度であることを考慮すれば、実需給断面により近い時点での平均値をベースラインとすることで、他の需要変動の影響を緩和できると分析している。

結論として、欧州で実施されているR1プーリング(複数リソースの組み合わせによる相乗効果)の検討や、現在の10秒応動要件とは別に30秒応動を求める新たな商品設計の必要性を提言している。特に30秒応動の場合、リソースポテンシャルが3倍近くに増加する可能性があり、調整力不足対策として有効であると評価している。本調査は、DSRの中長期的育成と需給調整市場における調整力不足解消に向けた重要な基礎データを提供するものである。