令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(貿易分野デジタル化連携ツールの検討等)報告書詳細版
報告書概要
この報告は、令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業として実施された貿易分野デジタル化連携ツールの検討等について書かれた報告書である。
貿易分野では2018年頃より貿易プラットフォームの立ち上げが国際的に活性化し、デジタル化への注目度が高まっているが、各プラットフォームが独自のインタフェース仕様を有するため相互連携が図られず、利用者に多重のコスト負担が生じている。この問題を受けて経済産業省では、国際標準規格に準拠したデータ連携の実現可能性を検証し、貿易分野のデジタル化促進を図るため研究会とワーキンググループを設置した。
調査では、トレードファイナンス分野における国際標準規格準拠データ連携の検証を実施し、信用状取引等の実業務で利用される貿易文書と国際標準規格との整合性を確認した。その結果、実業務で必要なデータ項目の多くが既存の国際標準規格でカバーされており、不足する項目については国連CEFACTへの追加申請を行うことで対応可能であることが明らかになった。また、標準化による効果試算では、貿易文書の作成・確認作業において大幅な時間削減効果とコスト削減効果が期待されることが示された。
諸外国の動向調査では、シンガポール、欧州、英国、フランス、韓国、中国等が国家戦略として貿易デジタル化に取り組んでいることが確認された。シンガポールではTradeTrustによる電子文書の真正性確保、欧州ではGAIA-Xによるデータ共有基盤の構築、韓国では官民連携による包括的な貿易手続電子化が進められている。これらの国では政府主導で法制度整備、プラットフォーム構築、国際連携が推進されている。
本調査の成果として、我が国における貿易デジタル化推進に向けた22の施策案を3つの目標に沿って整理した。目標1「書類の電子化」では法制度整備、ガイドライン策定、実証事業の実施を、目標2「データ連携性の向上」では国際標準規格の整備・普及、レジストリ構築、標準実装支援を、目標3「ネットワーク効果の創出」では官民連携体制構築、人材育成、国際連携の推進を提案している。これらの施策については優先度評価と官民分担案を示し、短中期的なロードマップを策定した。
今後の方向性として、書類の電子化では法的効力を持つ電子文書の普及促進、データ連携性の向上では実用的な標準フォーマットの提供と普及支援、ネットワーク効果の創出では持続可能な推進体制の構築が重要であると結論付けている。
