令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(諸外国等における経済の電子化を踏まえた課税の動向及びそれを踏まえた我が国の国際課税制度の在り方等に係る調査研究事業 )調査報告書
報告書概要
この報告は、経済のデジタル化に伴う国際課税制度の見直しについて書かれた報告書である。
OECD/G20包摂的枠組みにおいて2021年10月に合意されたPillar1とPillar2という2つの柱からなる国際課税ルールの見直しについて、その内容と各国の動向を調査・分析している。Pillar1は市場国への新たな課税権の配分を提案するもので、全世界売上200億ユーロ超かつ利益率10%超の多国籍企業を対象に、超過利益の25%相当額を市場国に配分する仕組みである。具体的には利益Aと利益Bの2つの要素から構成され、利益Aについては対象範囲、課税根拠、ネクサス及び売上ソースルール、課税所得の決定・配分、二重課税の排除、執行管理、税の安定性に関する詳細なモデルルールが策定されている。
Pillar2については国際最低課税制度として、多国籍企業グループに対する15%の最低税率を確保するためのGloBEルールが設定されており、所得合算ルール(IIR)と軽課税支払ルール(UTPR)による課税メカニズムが導入されている。報告書では米国、英国、EU、フランス、ドイツの4か国・1地域における税制動向を調査し、各国のPillar2国内法導入状況や米国の企業代替最低税(CAMT)の概要を分析している。さらに無形資産関連税制として、米国のFDII制度や英国・フランスのパテントボックス税制についても調査を実施している。
日本における今後のPillar2国内法制化に向けては、学識経験者及び産業界有識者との勉強会を通じて、既存の外国子会社合算税制との関係整理や簡素化、会計基準の想定論点について議論を行っている。また企業に対するアンケート調査により、Pillar2導入に伴う実務対応の影響を把握し、多国籍企業の事務負担軽減や制度の明確化に向けた課題を特定している。これらの調査結果を踏まえ、日本企業の国際競争力強化と日本経済活性化に資する国際課税制度のあり方について提言を行っている。
