令和4年度原子力の利用状況等に関する調査(諸外国における原子力イノベーションの動向調査)報告書
報告書概要
この報告は、諸外国における原子力イノベーションの動向について書かれた報告書である。米国、カナダ、英国、仏国、中国、ロシア、韓国の7か国を対象に、革新炉開発動向、安全性・経済性向上技術、原子力水素製造技術、組織マネジメントの4分野を調査している。革新炉開発では、各国でSMR(小型モジュール炉)や高温ガス炉、溶融塩炉など多様な炉型の開発が進展し、特に米国のARDP(先進原子炉実証プログラム)では2030年までに2基の実証炉建設を目指している。カナダや英国でも同時期の実証炉建設に向けた開発が加速している。安全性・経済性向上技術では、事故耐性燃料やHALEU燃料、モジュール工法、デジタル技術活用などが重点分野となっている。原子力水素製造では、高温ガス炉を利用した水素製造技術の開発が各国で進み、カーボンニュートラル実現に向けた重要技術として位置付けられている。組織マネジメントでは、各国政府が民間主導の原子力イノベーションを支援する体制を構築し、予算措置や制度整備を通じて技術開発を促進している。規制面では、革新炉の安全性評価に関する新たな規制枠組みの検討が進み、深層防護や確率論的リスク評価の適用方法が議論されている。本調査により、各国が2030年代の革新炉実用化に向けて技術開発と規制整備を両輪で推進していることが明らかになった。
