令和4年度新エネルギー等の保安規制高度化事業(水素保安戦略の策定に係る調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省による令和4年度水素保安戦略の策定に係る調査事業について書かれた報告書である。2050年カーボンニュートラル実現を見据えた水素社会の実現に向けて、水素保安の全体戦略を策定することを目的として実施された事業の成果をまとめている。
水素は炭素分を含まず二酸化炭素を排出しない環境特性を持ち、エネルギーキャリアとして貯蔵性、可搬性、柔軟性を有するため、自動車や船舶の燃料、化学プロセスの原料、エネルギーの貯蔵・輸送手段など幅広い分野での利用が検討されている。しかし水素は可燃性や脆性を有するため、取り扱いを誤れば重大な事故や災害を招く可能性があることから、適切な保安戦略の策定が不可欠である。
本事業では三つの主要な取り組みが実施された。第一に、有識者13名からなる水素保安戦略の策定に係る検討会を6回開催し、大型受入基地の整備や導管輸送等のインフラ整備、発電やモビリティ等での水素利用における安全規制の整備について検討を行った。検討会では水素分野の主要事業者からのヒアリングを実施し、ユースケースごとの具体的な検討事項や関連する安全規制の適用関係が不明確な点等を把握した。
第二に、海外における規制動向調査として、EU、ドイツ、米国、韓国における規制の実態や規制への民間規格の取り込み実態等を調査した。また国際的な規格であるISO規格やIEC規格、各国で活用されているEN規格、DIN規格、ASME規格、KGSコードについて、各水素分野における策定状況を整理した。これらの調査結果は検討会での議論において効果的に活用された。
第三に、水素の危険性等に関する情報の整理として、水素の持つ危険性に関する国内外の科学的知見をわかりやすい形で集約し、今後の規制検討においてすべてのステークホルダーが閲覧可能なライブラリーを整備した。また水素の特性を一般消費者にも理解できるよう、わかりやすく伝えるリーフレットを作成した。これらの成果を通じて、2023年3月に水素保安戦略の中間とりまとめが公表された。