令和4年度産業経済研究委託事業(マクロ経済の状況を踏まえた業界横断的課題の特定に関する調査・分析)最終報告書
報告書概要
この報告は、マクロ経済の状況を踏まえた業界横断的課題の特定に関する調査・分析について書かれた報告書である。世界経済が大きく変動する中で、経済産業省が経済政策全体の再構築に取り組むため、投資・賃上げ・イノベーションの好循環メカニズムを分析している。
報告書では、好循環が持続するためには需要創造的なイノベーションが重要であると指摘し、循環の起点とイノベーション実現の有無により4つのパターンに分類している。具体的には、投資起点でイノベーションに至らないパターン、賃上げ起点でイノベーションに至らないパターン、投資起点でイノベーション実現パターン、賃上げ起点でイノベーション実現パターンである。
各国の産業政策事例として、ドイツのIndustrie4.0、米国シェールガス産業、タイ自動車産業、シリコンバレー、韓国エンタメ産業などを分析している。特にドイツのIndustrie4.0事例では、政府が2億ユーロを拠出し研究開発費用の最大60%を補助することで、2011年から2022年にかけて製造業の労働生産性が全産業平均を上回る7.6%の増加を実現した。
また、EUの域内回帰動向についても調査しており、2014年から2018年にかけて製造業を中心とした域内回帰が進んでいることを明らかにしている。回帰の主要理由として、企業のグローバル体制再編、デリバリータイム、生産自動化、オフショア生産の質の低さ、顧客との近接性などが挙げられている。これらの分析を通じて、日本の経済政策策定における示唆を提供している。
