令和4年度産業経済研究委託事業(緊急時における被害情報把握・事態対処の体制強化に向けた調査)報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省における緊急時の被害情報把握と事態対処の体制強化に向けた調査について書かれた報告書である。令和4年度に株式会社エー・フォースが実施した産業経済研究委託事業の成果をまとめたものとなっている。
事業の背景として、首都直下地震が今後30年以内に発生する確率が70%と試算される中、経済産業省が所管する電気・ガス等のライフラインや産業界への対応が極めて重要であることが示されている。経済産業省では実災害対応に加え、業務継続計画に基づいた防災訓練を実施してきたが、更なる実効性向上が求められていた。
本事業では、まず経済産業省の危機管理・災害対策における課題調査と助言を実施した。これまで複数の資料に分散していた防災対応マニュアルを整理し、官房PT、エネルギーPT、物資PTの各班ごとに13種類のマニュアルを新たに作成した。各班の担当者へのヒアリングを通じて実用性の高い内容とし、ひと目で分かりやすく、災害発生時の混乱の中でも適切な対応を導けるよう配慮された。
また、首都直下地震を想定したブラインド型シミュレーション演習型訓練を実施した。令和5年3月10日に行われた本訓練では、都心南部直下地震によるマグニチュード7.3、最大震度7の災害を想定し、発災1時間後から2時間45分後までの状況を等倍で再現した。本省職員46名が参加し、サポート役20名とともに経済産業省本館2階災害対策業務室で実施された。
訓練の目的は防災担当官の意識向上・能力向上、災害対応マニュアル等の基本インフラ整備、ITツールの活用であった。参加者には共通シナリオと個別シナリオが付与され、メディア情報や関係者からの問い合わせなど、現実的な情報を基に災害時対応を実施した。シミュレータとの電話やメールでのやり取りを通じて、より実践的な訓練環境が構築された。
今回の事業の特徴は小規模性による持続可能性であり、前回の休日4時間開催から金曜日終業後3時間に短縮された。これにより多くの職員が参加しやすい環境を整えたが、一方で支分部局との連携訓練の必要性も明らかとなった。訓練では市民からの物資要求への対応など、各PTで適切な対応が確認されたが、季節による災害対応の違いについても今後検討が必要とされる。
