令和4年度「ものづくり企業のカーボンニュートラル推進に関する調査」調査報告書
報告書概要
この報告は、中部地域のものづくり企業のカーボンニュートラル推進に関する調査について書かれた報告書である。世界的にサプライチェーン全体での脱炭素化への動きが加速する中、中部地域の基幹産業である自動車産業においても、大企業では直接取引を行う主要部品メーカーに対してCO2排出削減を要請する動きが見られている。しかし、中堅・中小企業においては、カーボンニュートラルに対する関心は高まっているものの、知識面・体制面が不十分で具体的な対応に手が付けられていない企業が多く、支援体制も確立されていない実情がある。本調査は、中部地域の産業界でのカーボンニュートラル対応に係る現状と課題等を把握・整理し、地域企業の対応をより進めるための具体的な支援モデルの作り上げや支援施策の検討を目的として実施された。調査は四つのテーマに分かれ、中部地域のCO2排出量把握と今後の予測分析、ものづくり関連企業の削減に向けた取組状況及び支援ニーズ等の調査、海外のカーボンニュートラルに向けた取組の調査、そして促進に向けた支援施策等の検討が行われた。調査結果から、中部地域の総排出量の85%は東海地域から排出されており、特に東海地域の産業部門が総排出量の50%を占めることが明らかになった。製造業では鉄鋼業、輸送用機械器具製造業、化学工業、窯業・土石製品製造業、石油製品・石炭製品製造業の上位5種で東海地域の75%の排出量を占めている。企業ヒアリングを通じて、サプライチェーンでの調達先を巻き込んだ対応や、社内の意識啓発、中小企業に適した補助金などの支援策の不十分さが課題として明らかになった。欧州の先進事例調査では、中央・地方政府の役割分担の下で莫大な資金を投入し、産業のカーボンニュートラル対応を促進していることが確認された。これらの調査結果を踏まえ、特に排出量が多い産業に注力した削減策の検討と、サプライチェーンでの対応や意識啓発、インセンティブを付与する仕組みづくりが重要であると結論づけられている。
