令和4年度中小企業の実態把握等のためのデータ利活用に関する委託調査事業調査報告書
報告書概要
この報告は、中小企業の実態把握等のためのデータ利活用に関する調査事業について書かれた報告書である。新型コロナウイルス感染症の流行や原油・原材料価格の高騰など、中小企業を取り巻く環境が激しく変化する中で、従来の政府統計では詳細性や速報性に課題があることから、オルタナティブデータの有効活用を検討することを目的として実施された調査である。中小企業の売上動向把握のため、JCBとナウキャストが共同開発した「JCB消費NOW」のクレジットカード決済データを活用し、中小企業の売上動向を定期的に把握するための業種別指標を11業種で試作した。指標の有効性・妥当性評価においては、経済学や統計学の専門家による研究会を設置し、指標の精度向上や活用可能性について助言を受けるとともに、地方自治体等へのヒアリング調査を実施した。また、事業者を取り巻く外部環境の構造化については、新聞などのテキストデータを活用し、「感染症」「円安」「原材料・資源価格の高騰」「サプライチェーン混乱」「震災」といったトピックについて、因果型共起構造分析と因果構造分析の2つのアプローチによる分析を行った。これらの分析により、事象間の因果関係をネットワーク的に可視化し、中小企業の各業種に対する波及効果を探索した。調査結果として、クレジットカードデータを用いた指標は速報性に優れ、業種別の動向把握に有効であることが確認されたが、データの網羅性やバイアス除去などの課題も明らかになった。テキストデータ分析については、外部環境変化の構造的理解に寄与する可能性が示された一方で、分析手法の精緻化や継続的なモニタリング体制の構築が必要であることが判明した。
