令和4年度燃料安定供給対策に関する調査事業(合成燃料の導入及び活用拡大に向けた検討事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、2050年カーボンニュートラル実現に向けた合成燃料の導入及び活用拡大について書かれた報告書である。
再生可能エネルギー由来の電力を用いて製造された水素とCO2を原料とする合成燃料は、化石燃料の代替として輸送用燃料への活用が期待され、日本では2040年までの自立商用化を目標として掲げられている。しかし世界的にも商用化が進んでおらず、供給・需要両面において予見性が立ちにくく、投資判断が困難な状況となっている。
報告書では、海外における合成燃料プロジェクトを詳細に調査し、世界各地で実証・商用規模のプロジェクトが計画されていることを明らかにした。主要な製造手法として、メタノール・ツー・ガソリン(MtG)、フィッシャー・トロプシュ(FT)合成、アルコール・ツー・ジェット(AtJ)、メタノール合成が用いられており、運輸部門向けの燃料製造ではMtGとFT合成が中心である。
チリのHIFグループによるMtGプロジェクトは2023年から実証開始し、2020年代後半に10万kL/年以上の大規模生産を予定している。米国のInfiniumは独自の触媒技術を持ち、既にAmazonトラックへの燃料供給を開始している。北欧とドイツでは航空分野向けにFT合成による1~10万kL/年規模のプロジェクトが計画されている。
CO2供給源については、直接空気回収(DAC)、産業由来のCO2回収・利用(CCU)、生物起源CO2が活用され、水素は主に再生可能エネルギーによる水電解で製造される計画である。合成燃料の需要ポテンシャルや自立商用化に向けた課題についても詳細な検討が行われ、官民協議会を通じて関係者間での情報共有と連携強化が図られている。
