令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)報告書
報告書概要
この報告は、日本の急速な高齢化社会に対応するため、サステナブルな介護システムの構築について調査した報告書である。2025年問題として知られる団塊世代の後期高齢者突入により、介護に関する人材面・財政面の課題が深刻化している状況を踏まえ、公的保険制度の持続性向上と新たな支援の受け皿形成という二つの観点から検討を実施した。
介護業界の高度化については、事業継続性向上が重要課題とされ、ICTツールの利活用促進やケアの質向上が求められている。しかし現場では活用人材の不足や業務プロセス改善への未浸透といった問題が存在している。介護事業者の収益複線化による介護報酬に依存しない新たな収益源確保が必要であり、新規事業開発人材の不足と経営組織力の課題解決に向けた人材育成や他社連携促進が施策として提案されている。
自助の観点では、仕事と介護の両立支援が重要な課題として位置づけられている。ビジネスケアラーと呼ばれる働きながら家族介護を担う人々が増加し、2030年には約318万人に達すると予測されている。介護離職者は年間約10万人に上り、労働生産性損失を含む経済損失は2030年に約9.1兆円に達する見込みである。共働き世帯の増加により介護への備えが不十分な中で両立体制構築に多大な時間を要している現状がある。
公的保険外サービスの活用や地域コミュニティを中心とした互助の広がりも検討されている。NPOをはじめとした非営利団体による地域高齢者支援活動では好事例も生まれているが、マネタイズの困難による継続性の低さが課題となっている。本調査では有識者会議の運営を通じて多角的な検討を行い、経済産業省として注力すべき領域と具体的施策の方向性を提案している。
