令和4年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用した流通レジリエンス構築に向けた事例創出)報告書
報告書概要
この報告は、災害時における消費財サプライチェーンの物流最適化について書かれた報告書である。本事業は、地震や豪雨等の大規模災害時においても生活必需品の安定供給を維持するため、IoT技術やRFIDを活用した輸送物資の見える化と、迂回路を含む新たな流通・物流網の構築を目的として実施された。三菱UFJリサーチ&コンサルティングが主体となり、大日本印刷、東芝テックが技術支援を担当し、牛乳石鹼共進社、小林製薬等のメーカー6社、あらた・PALTACの卸売業者、関光汽船・新日本海フェリー等の物流事業者、ツルハ等の小売業者が協力する実施体制で進められた。調査では各企業へのヒアリングを通じて物流情報の把握・共有状況、輸送手段、IoT技術活用ニーズを詳細に分析した。実証実験は海上輸送パターンと陸上輸送パターンの二つのアプローチで実施され、海上輸送では苫小牧港・小樽港を活用した迂回ルートの有効性が検証された。陸上輸送では物流拠点を経由したピストン輸送による中継輸送システムが試行された。実験結果として、海上輸送は供給ルートとして有効であるものの、リードタイムの延長とコスト増加という課題が明らかになった。陸上輸送のピストン輸送は、ドライバーの拘束時間短縮と労働時間規制への対応で有効性が確認されたが、車両確保と中継拠点のキャパシティが課題として指摘された。既存物流拠点の災害時臨時拠点としての活用については、物理的制約と人員確保、取扱商品以外の管理体制構築が主要な課題となることが判明した。
