令和4年度産業経済研究委託事業 先端半導体の生産施設整備施策の効果検証等に関する委託調査事業報告書(公表版)

掲載日: 2023年7月14日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務情報政策局情報産業課
委託事業者: EY税理士法人
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報告書概要

この報告は、先端半導体の生産施設整備施策の経済効果について分析した報告書である。令和4年3月に施行された5G促進法に基づき、国内における先端半導体の安定的な生産を目的として実施された助成金交付政策の経済面での効果を検証している。分析対象は、JASMによる計画とキオクシア等による計画の2件であり、これらの大規模投資計画に対する助成金の経済的インパクトを複数の分析手法により評価している。

政策評価の枠組み構築にあたっては、米国のエビデンスに基づく政策立案の基盤法やCHIPS Actといった海外の半導体産業支援政策を参考とし、ロジック・モデルを構築した。米国では製造業への補助金評価において産業連関分析や直接評価モデルが活用されており、地域経済への影響測定が一般的となっている。本分析では、直接評価モデル、産業連関分析、CGEモデルという3つの経済分析手法を用いて政策インパクトを多角的に検証している。

分析結果によると、CGEモデルを用いた場合、本計画によるGDP影響額は約2.3兆円から約3.1兆円と試算され、雇用効果は延べ約10.4万人から約12.5万人となっている。税収効果については4,601億円から5,855億円と推計され、直接評価モデルでは補助金額を上回る6,057億円の税収効果が見込まれている。産業連関分析では制約条件が考慮されないため経済効果を過大評価する傾向があるが、CGEモデルでは供給制約や労働市場の制約を考慮したより現実的な推計が可能となっている。

サプライチェーンの堅牢性に関する分析では、半導体の国際価格上昇や輸入調達困難といった状況において、本計画により年間2,000億円以上のGDPへの押し上げ効果が期待される。特に輸入による調達が困難になる場合には、国際価格と比較して低い価格での安定調達により川下産業が追加的な恩恵を受けることが確認された。GDP影響額及び税収効果が補助金を上回ることから、本計画の経済面から見た投資対効果は高いと結論付けられている。