令和4年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた 事業実施可能性調査事業委託(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査)ケニア共和国・グリーン水素バリューチェーン開発可能性調査事業事業報告書
報告書概要
この報告は、ケニアにおけるグリーン水素開発の事業実施可能性について検討した調査報告書である。経済産業省委託事業として豊田通商株式会社と日本工営株式会社により実施され、令和4年度の質の高いエネルギーインフラの海外展開促進を目的としている。
ケニアは豊富な再生可能エネルギー資源を有しており、グリーン水素開発の高いポテンシャルを持つ。電源構成の約90%を再生可能エネルギーが占め、地熱、水力、風力、太陽光発電が主体となっている。世界的にグリーン水素需要が拡大する中、アフリカ諸国は重要な生産・輸出拠点として位置づけられ、ケニア政府もグリーン水素ワーキンググループを設置し積極的な取り組みを進めている。
調査では6つの需要分野を対象としたパイロットプロジェクトを検討した。肥料分野では尿素やアンモニア系肥料の国産化を通じて輸入依存からの脱却を図る。港湾分野ではモンバサ港の荷役機械を水素燃料電池化し、環境負荷低減と運営効率向上を目指す。モビリティ分野では物流・旅客車両の水素化により輸送部門の脱炭素化を推進する。パワーソリューション分野では定置式燃料電池による分散電源システムの構築を検討する。燃料分野では産業用ボイラの水素化により製造業の環境負荷削減を図る。製鉄分野では水素還元技術の導入により従来の石炭依存型製鉄からの転換を目指す。
各分野において製造原価分析、パリティ価格分析、温室効果ガス削減効果の評価を実施し、事業性と環境効果を定量的に検証した。水素製造原価は電力価格と設備投資に大きく依存するため、政府による財政支援やインセンティブ制度の導入が不可欠である。カーボンクレジット制度の活用も事業性向上の重要な要素として位置づけられる。
