令和4年度省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費(ルール形成戦略に係る調査研究(次世代航空機(電動航空機、水素航空機)のルール形成戦略に係る調査研究))最終報告書
報告書概要
この報告は、次世代航空機の脱炭素化技術における標準化動向と日本企業の戦略について書かれた報告書である。国際的な環境対応への機運が高まり、航空分野においても急速な脱炭素化要求が高まっている現状を受けて、欧州エアバス社の水素航空機ZEROeや米ボーイング社の遷音速トラスブレース翼機などの次世代技術を活用した航空機開発が各OEM企業によって掲げられており、2030年代半ばでの実用化が見込まれている。SAEやEUROCAE等の民間標準化団体において安全性等に関する標準化議論が活発化しており、FAAやEASA等の規制機関はこれらの団体が発行する文書を参照して規制を定めるケースが多いため、現在議論されている規格が将来的に各国で準用される可能性がある。電動化分野においては、2017年頃より電気推進システムを有する電動航空機の研究開発競争が大きく加速しており、SAEでは2021年に電動化関連コミッティとしてAE-10とAE-11が新設され、合計10コミッティで電動化に関する標準化議論が進行している。日本企業は推進システムに関わるモーターやコンバーター、絶縁を中心とした幅広い分野で開発を実施している。一方、水素に関連する標準化議論は現時点では限定的であり、SAEではAE-7(F)の1コミッティでのみ議論されている状況である。軽量化分野ではASTM、CMH-17、NCAMP等で材料を中心とした標準化議論が実施されているが、具体的な製造技術に関してはOEMとの個別議論が中心となっている。日本企業は欧米諸国の航空関連企業よりも規模が小さい企業が多いため、戦略的に連携した形での標準化議論への参画が必要であると結論付けられている。
