令和4年度重要技術管理体制強化事業(航空機エンジンサプライチェーンにおける供給安定性及び競争優位性に関する調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、航空機エンジンサプライチェーンにおける供給安定性及び競争優位性について書かれた報告書である。令和4年度重要技術管理体制強化事業として実施された本調査は、CO2削減に寄与する電動航空機の実現に向けた日本の航空機産業への影響を検討するものである。調査対象は化石燃料から電力への動力転換技術に焦点を当て、SAFや水素の直接燃焼等の従来燃焼系燃料転換技術は対象外とされた。
将来航空機における重要部材として、電動推進の実現に不可欠なモーター及びバッテリーが特定された。これらは電動化された動力のサプライチェーンにおいて、複数の電動化パターンに共通する核心的構成要素である。燃料電池や水素タンクも電力供給源として重要であるが、本調査では電動推進技術の基礎的把握を目的として調査範囲を絞り込んだ。
製造技術分析においては、エンジン関連技術と製造技術の両面から詳細な検討が行われた。先端技術・素材の動向調査では、超電導モーターの技術動向が重点的に分析され、その他の電動化関連技術・素材についても包括的な調査が実施された。
調査結果として、従来の延長上にない革新的な電動化関連技術が複数確認された。アルミニウムを用いたコイル及び軽量モーターの開発、小型電動航空機向け高出力密度モーターの開発、サマリウムコバルトのマイクロ磁石膜の開発といった具体的な技術開発事例が示された。特にデンソーが開発したプロトタイプモーターは出力密度25kW/kgを実現し、従来のeVTOL搭載モーターの1k~2kW/kgレベルを大幅に上回る性能を達成している。これらの技術革新は日本の航空機産業における競争優位性確保の可能性を示唆している。
