令和4年度ポストコロナ時代における地域サービス系企業の競争力強化・労働生産性向上に向けた調査事業(地域経済産業活性化対策等調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、ポストコロナ時代における地域サービス系企業の競争力強化・労働生産性向上について書かれた報告書である。
わが国のサービス産業は名目GDPの約7割を占め、地域経済の基幹産業となっているが、少子高齢化や人口減少により担い手不足と需要減少に直面している。特に対個人サービス業は生産と消費が同時発生する特徴があり、市場の地理的制約を受けやすいため、労働生産性の向上が困難な状況にある。新型コロナウイルスの長期化により、経営資源の乏しい中小企業は特に厳しい状況が続いている。
そこで関東経済産業局では2022年1月から研究会を開催し、労働生産性向上に向けた重点項目として「企業の意識改革の促進」「中核人材確保・活用の促進」「企業間連携の促進」の3項目を整理した。本事業では、企業間連携・経営資源集約化に取り組む先進事例の調査・分析と、自治体等と連携した支援モデルの試行を実施した。
先進事例調査では、一般社団法人下呂温泉観光協会、京都錦小路まちづくり合同会社、株式会社阿智昼神観光局など8つの事例について調査を行った。これらの事例では、データ活用による地域一体のマーケティング、ECサイト展開、着地型商品開発等を通じて労働生産性向上を実現していた。
支援プログラムのモデルテストでは、新潟県長岡市、新潟県佐渡市、静岡県磐田市の3地域において、各地域の課題やニーズに即した支援プログラムを実施した。デジタル地域通貨のデータ利活用、観光マーケティング、スタジアムを核とした企業間連携等のワークショップを開催し、参加者の意識改革と連携促進を図った。
調査結果から、企業間連携による労働生産性向上を実現するためには、コミュニティを牽引するキーパーソンの存在が極めて重要であることが明らかになった。また、地域関係者が横断的に関与・交流できるネットワークづくりの必要性が示された。成功のポイントとして、地域の現状把握、有志によるコミュニティ組成、定期的な勉強会・交流会の開催、スモールステップでの取組実装が挙げられた。
企業間連携促進の類型として「地域資源活用型」と「課題解決型」の2つが整理された。前者は地域の強みを活かした未来志向の取組であり、後者は顕在化した課題解決に向けた短期的成果創出を目指すものである。今後の政策方向性として、各関係者の役割を明確化し、キーパーソンの確保・育成、共通ビジョンの共有、適切な役割分担を通じて自走可能な支援体制の構築が求められるとしている。
