令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(海外投資拡大に向けた企業体制変革に関する調査)調査報告書<日本語概要版>
報告書概要
この報告書は、日本企業の海外投資拡大に向けた企業体制変革について書かれた調査報告書である。経済産業省の委託により、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社が令和4年度に実施した調査結果をまとめたものである。
調査では、日本企業が海外投資を日常化する際に直面する9つの主要課題が特定された。これらの課題は投資プロセスの段階に応じて、事業戦略構築から初期的投資検討を行うPre-Phase、デューデリジェンスから契約締結・クロージングまでのDeal-Phase、PMIから子会社経営・モニタリングまでのPost-Phaseに分類されている。
Pre-Phaseでは、ポートフォリオ変革の手段として海外投資を捉える視点の欠如、主体的な案件探索・評価システムの未構築、投資案件の評価基準の不明確さ、意思決定プロセスの遅さが課題として挙げられている。Deal-Phaseでは、海外投資対応人材の不足と推進体制の不備、想定シナジーの検証体制の欠如が問題となっている。Post-Phaseでは、グローバルマネジメント人材の育成・採用困難と海外子会社管理体制の不備が継続的な課題として認識されている。
これらの課題の背景には、企業体質の変革の遅れ、近視眼的な経営姿勢、株主エンゲージメントへの不慣れさが真因として存在することが明らかになった。具体的には、自前主義の浸透、リスク偏重の考え方、リーダーシップの不在といった企業体質上の問題、長期的視点での意思決定の欠如による現状維持への甘え、投資家への開示とコミットのバランスの欠如、積極的な株主提案を行う機関投資家の少なさが根本的な要因として特定されている。
これらの課題に対する解決策として、海外投資実行に関するガイドラインの整備、ナレッジシェアの促進、パートナリング機会の提供、ファイナンス支援の拡充、関連ルールの形成といった実行面での支援に加え、株主エンゲージメントやエクイティストーリー構築に関するガイダンスの公表が提案されている。
