令和4年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業(火薬類爆発影響低減化技術基準検討事業)報告書
報告書概要
この報告は、火薬類の爆発影響を低減化する技術基準の策定について書かれた報告書である。火薬類取締法に基づき規制される火薬・爆薬・火工品の保安技術進展に伴い、火薬庫等の施設に設置される土堤の構造基準策定を目的として実施された研究開発事業の成果をまとめている。
従来の土堤は両側の傾斜が45度と定められているが、占有面積が大きく用地確保が困難となっているため、火薬庫側を垂直とする土堤の技術基準策定が急務となっている。本研究では、平成24年度から27年度の実証実験結果を踏まえ、ソイルセメントで補強する場合のセメント配合量を150kg/m³から200kg/m³に増加させた内面垂直ソイルセメント土堤と、内面を1/2コンクリート擁壁で補強する場合の土堤傾斜条件について検討を行った。
爆発実証実験では1/7.9スケールの種々構造の土堤を設置し、合計4回の爆発実験を実施して爆風圧、飛散物、地盤振動等のデータを取得した。実験結果により、ソイルセメント土堤の場合、爆風圧や地盤振動は従来の45度土堤と同等であり、飛散物についてもソイルセメントが粉々に粉砕され軽量飛散物となることで従来土堤と同等の安全性が確認された。また、土堤内面の傾斜角を60度、45度とし内面1/2をコンクリート垂直擁壁で補強した場合についても、爆風や地盤振動が内面90度の場合と同等であり、コンクリート擁壁破片の飛散も同等に抑制されることが判明した。
さらに地中式火薬庫の保安距離策定に必要なデータ取得のため、火薬庫全長/火薬庫径およびトンネル直径/火薬庫直径が極端に大きい場合や小さい場合のシミュレーションを実施し、前年度より精度を高めた保安距離案を提案している。これらの成果により、火薬類による災害防止と公共安全確保に資する技術基準策定のための貴重な科学的データと技術的知見が得られた。