令和4年度地域デジタルイノベーション促進事業 (データに基づく地域未来牽引企業調査・分析事業) 最終報告書

掲載日: 2023年8月4日
委託元: 経済産業省
担当課室: 地域経済産業グループ地域企業高度化推進課地域未来投資促進室
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報告書概要

この報告は、経済産業省が実施した地域未来牽引企業の中間評価とフォローアップ分析について書かれた報告書である。地域未来牽引企業は2017年から2020年にかけて選定された、地域の経済成長を牽引することが期待される企業群であり、2024年度末の有効期間を前に中間評価が実施された。

中間評価は2022年7月から9月にかけて4,733件の企業に調査票を配布し、3,524件の有効回答を得た。調査は郵送とWEBを併用し、回収率74.5%を達成している。調査項目は中間評価のための基本調査と地域未来牽引企業向けアンケートの2部構成となっており、目標達成への取組状況、選定の影響、各種支援策の活用状況などを聴取した。

フォローアップ分析では、政策支援の効果検証を目的として、傾向スコアマッチングと差の差推定法を組み合わせたPSM-DID手法を採用した。この手法は因果推論において学術的に確立された標準的手法であり、一橋大学大学院宮川大介教授の監修のもと実施された。分析対象は11個の指標であり、企業規模別や製造業・非製造業別のサブサンプル分析も併せて行われた。

分析結果として、従業員数と域外販売額において明確な政策効果が観察された。これは地域未来牽引企業に選定されたことによる知名度向上が、従業員採用や域外販路拡大にポジティブな影響を与えたためと考えられる。企業規模別分析では、中小企業において売上高でも政策効果が確認された。給与総額についても政策効果が見られたが、一人当たり給与では統計的有意性は認められず、低賃金雇用の拡大ではなく適正な賃金水準を維持しながらの雇用拡大であったことが示唆される。

一方で、付加価値額、営業利益率、労働生産性などの収益性・生産性指標では明確な政策効果は得られなかった。これは地域未来牽引企業が資本と労働の投入拡大によりアウトプット拡大を実現している一方で、生産性・収益性の改善については今後の課題であることを示している。支援措置の分析においては、アンケートの未回答や回答漏れの影響でサンプルサイズの確保が困難であり、結果が分散した。今後は各支援措置の利用状況を一元的に把握できる仕組みの整備が提起されている。