令和4年度産業経済研究委託事業(我が国磁石産業の持続的発展に向けた調査事業)~最終報告書~
報告書概要
この報告は、日本の磁石産業の持続的発展について書かれた報告書である。永久磁石は自動車、電子機器、家電、武器等の幅広い製品の高性能駆動に関与する基幹部品であり、経済社会の電動化により重要性が高まっている。しかし永久磁石の世界シェアは中国が80%を占め、日本は約15%となっており、日本を含む世界全体が中国に大きく依存している状況である。中国企業は自国内でレアアースを調達できるため安価な製造が可能であり、大規模設備投資による大量生産コスト削減を実施している。また原料採掘から素材製造、磁石製造、モーター製造に至るサプライチェーン全体において、川上領域を中国に抑えられている状況が確認された。調査では各国の法規制動向、サプライチェーンの主要企業、技術動向を整理し、中国は自国に有利な規制を推進し、欧米は自国産業強化の支援策を進めているのに対し、日本は相対的に法規制が少ない状況である。研究会では自動車駆動モーターのサプライチェーン関係者から、サプライチェーン横断の取り組み、バージン・リサイクル原料の確保、技術開発、性能・リサイクル易化とコストのトレードオフという4つの主要課題が特定された。今後は開発中鉱山を軸としたグローバル連携によるバージン材供給リスクヘッジ、リサイクル技術開発促進、レアアースフリー技術開発推進等の複数施策が必要である。
