令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(エネルギー転換に関する日独エネルギー変革評議会に係る調査)報告書
報告書概要
この報告は、日独両国のエネルギー転換と脱炭素化に関する共同研究について書かれた報告書である。
2020年に日本が2050年カーボンニュートラル目標を表明し、ドイツが2045年までの脱炭素化を目指す中で、両国は2016年から日独エネルギー変革評議会を設置し、共通の政策課題について議論を深めてきた。2022年度は建物の脱炭素化、エネルギー多消費産業である石油化学産業の脱炭素化、廃熱利用、化石燃料の脱炭素化という4つの優先研究分野を選定し、専門家による共同研究を実施した。
建物の脱炭素化では、既築建物の長い寿命を考慮し、建て替えではなく既存建物の脱炭素改修が重要であることが指摘された。断熱性能向上、高効率機器導入、太陽光発電設置に加え、建材製造時のCO2排出削減も課題となっている。石油化学産業については、両国とも強力な化学産業を有しながら、技術的・経済的に脱炭素化が困難な分野として、産業維持と排出削減の両立という課題に直面している。廃熱利用では、多くのプロセスで発生する廃熱の回収・利用によるエネルギー効率向上の可能性が検討された。
化石燃料の脱炭素化については、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機が両国に大きな影響を与える中で、短期的な化石燃料投資の必要性と長期的脱炭素目標との整合性が課題となった。ドイツは再生可能エネルギーと省エネルギーによる化石燃料削減に重点を置く一方、日本は原子力や水素・アンモニアなど多様なゼロカーボン燃料の活用とCCUS技術による化石燃料の脱炭素利用を重視している。両国ともエネルギー自給率が低く、地理的・地政学的条件の違いが戦略の相違を生んでいるが、省エネルギーと再生可能エネルギーの推進では共通の優先順位を持っている。