令和4年度中小企業実態調査事業(スタートアップの資金調達に関する企業の実態調査および検討会実施等)調査報告書

掲載日: 2023年8月4日
委託元: 経済産業省
担当課室: 中小企業庁事業環境部金融課
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和4年度中小企業実態調査事業(スタートアップの資金調達に関する企業の実態調査および検討会実施等)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、令和4年度にスタートアップの資金調達に関する企業の実態調査および検討会実施について書かれた報告書である。経済産業省中小企業庁の委託を受け、株式会社三菱総合研究所が実施した調査事業の結果をまとめている。本調査は、我が国の成長戦略において重要な役割を果たすスタートアップの資金調達環境を改善するため、特にデット・ファイナンスの活用実態と課題、および中小企業のエクイティ・ファイナンス活用に向けたガバナンス体制について包括的に調査したものである。

調査の背景として、日本のスタートアップ数は依然として低水準にとどまり、成長するスタートアップが極めて少ない状況がある。米国等と比べて成長ステージに応じた資金調達手段の規模が低水準であり、起業後の資金調達環境の整備が重要な課題となっている。スタートアップの資金調達手段としてはエクイティファイナンスが想定されるが、民間金融機関からの借入金等のデットファイナンスで資金調達を行うケースも一定数存在している。しかし、スタートアップによるデットファイナンスの活用実態やその課題、デット性資金の供給元側の実態等に関する調査・データは少ない状況であった。

調査内容は主に4つの分野で構成されている。第一に、スタートアップ向けのインターネット調査を516件実施し、デット・ファイナンスの活用実態を調査した。また、政府系金融機関、民間金融機関、独立系デットファンドに対するインタビュー調査を実施し、供給側の実態を把握した。第二に、スタートアップのデット・ファイナンスに関する学術研究を「市場の新陳代謝」「中小企業の資金調達」「経営者保証等のその他の論点」の3つのテーマに分類して整理した。第三に、これらの調査結果を踏まえ、スタートアップによるデット・ファイナンスの活用が有効となる状況やタイミングについて課題分析を行った。

第四に、「中小エクイティ・ファイナンスに係るガバナンス検討会」を4回開催し、有識者9名による議論を実施した。同時に中小企業のガバナンスに関する文献調査とインターネット調査を実施し、エクイティ・ファイナンス活用経験のある企業155件とない企業155件から回答を回収した。これらの調査と検討会での議論に基づき、「中小エクイティ・ファイナンス活用に向けたガバナンス・ガイダンス」とその概要資料を作成した。

調査結果からは、スタートアップのデット・ファイナンス活用における課題として、情報開示の問題、金融機関におけるベンチャーデットの審査体制、ベンチャーデット市場の形成などが明らかになった。また、中小企業のガバナンス体制について、「戦略的な経営」「持続的な成長を支えるための仕組み」「信頼関係構築」の3項目に分類して整理し、エクイティ・ファイナンス活用におけるガバナンスの重要性を示した。本報告書は、スタートアップの資金調達環境の改善と成長促進に向けた政策立案の基礎資料として活用されることが期待されている。