令和4年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(経営者保証や個人破産時の残存財産の範囲に関する諸外国調査)公表用報告書
報告書概要
この報告は、経営者保証や個人破産時の残存財産の範囲に関する諸外国の制度について調査した報告書である。令和4年度に経済産業省中小企業庁の委託により実施され、米国、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の5か国を対象として、経営者保証制度の在り方と個人保証債務整理の手続・免責範囲等を調査・分析したものである。調査の背景として、日本では7割強の事業者が経営者保証を提供しており、新規融資においても半数近くが同保証を求められるという現状がある。しかし経営者保証には事業展開の抑制や事業再生の早期決断阻害といった弊害が指摘されており、コロナ禍でのゼロゼロ融資の返済本格化に伴い、今後も資金繰りを主因とした事業停止や倒産の増加が想定されている。
各国の調査結果では、米国では中小企業向け融資のほとんどで経営者保証が一般的慣習となっており、SBAローンでは20%以上の持分所有者に個人保証を要求している。イギリスでは自由市場競争が前提であり、法人破産時に経営者保証した経営者を保護する制度は存在しない。フランスでは有限責任事業者制度により事業用財産と個人の生活用財産を分離することが可能である。ドイツでは法人破産が保証人の個人破産につながる事態を回避する制度は特に見当たらない。韓国については日本と同様に経営者保証の実務が根強いものの、法人破産が経営者の個人破産とならないための直接的制度はみられない。
政府系金融機関の流動性支援策についても各国で調査を実施し、その位置付けや民間金融機関との棲み分けについて整理した。比較分析の結果、諸外国では法人破産時に経営者の破産を回避する施策の必要性を感じておらず、問題意識も希薄であることが判明した。一方で日本の経営者保証ガイドラインによる私的整理は、99万円を超えるインセンティブ資産及び華美でない自宅を確保できるという広い残存資産の範囲を有しており、経営者の再チャレンジ支援の観点から大きな意味があると評価された。
