令和4年度産業技術調査事業(企業のイノベーション創出力を高める人材育成に係る調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、企業のイノベーション創出力を高める人材育成について書かれた報告書である。経済産業省の委託により有限責任監査法人トーマツが2023年2月に実施した令和4年度産業技術調査事業の成果をまとめたものである。
報告書は企業におけるイノベーション人材の育成課題を多角的に分析し、研究者アンケート、人事アンケート、ヒアリング調査、有識者ヒアリングを通じて実態を把握している。調査結果から、理系修士・博士人材の多くがリーダーシップを敬遠する傾向があり、マネジメント職への移行に消極的であることが明らかになった。また、研究者は対人コミュニケーション能力よりも技術的専門性を重視する特性があり、従来のビジネス系人材育成手法では効果的でないことが判明した。
これらの課題を踏まえ、報告書では複数の人材育成モデルを提案している。まず「研究者キャリアパスの集中支援」では、研究に特化した専門職としてのキャリア発展を支援し、無理にマネジメント職に転換させない方針を示している。「企業横断共同プラットフォーム」では、企業の枠を超えた技術者同士の協働により、グローバル競争力のある基幹技術開発を目指している。「360度評価&メンターモニタリング」では、専門家同士による適切な評価システムの構築を提案している。
さらに報告書は、挑戦的なアサインメントを教育機会として活用する際の評価制度の在り方について言及している。教育目的のアサインメントでは通常の人事評価基準を適用せず、別の評価軸で人材を育成することの重要性を指摘している。また、次世代リーダー候補の選抜と育成を組織内でどの程度オープンにするかという運用上の課題についても検討している。
3Mの事例では「15%ルール」による自発的な研究風土の重要性が紹介され、技術者の興味関心を維持し続けることがイノベーション創出の鍵であることが示されている。
