令和4年度中堅・中小企業輸出ビジネスモデル調査・実証事業(現下の国際情勢を踏まえた輸出可能性調査)報告書
報告書概要
この報告は、ロシア・ウクライナ情勢を踏まえた日本の中堅・中小企業の輸出可能性および中央アジア・コーカサス地域への事業展開について書かれた報告書である。
2022年のロシアによるウクライナ侵略を受けて西側諸国が実施した経済制裁により、国際的なサプライチェーンの再編が進んでいる状況において、日本の中堅・中小企業がこの変化を好機として海外展開を図る可能性を検討している。調査は二つのテーマに分かれており、第一に安全保障の観点から見直されている米国・EU諸国のサプライチェーンに日本企業が参入する余地を探っている。
米国および欧州連合は中国への依存度を下げるサプライチェーンの構築を目指しており、特に繊維、鋳物、食品の三分野において日本企業の参入可能性が高いと分析されている。これらの分野では日本企業の技術力や品質管理能力が評価されており、特に中堅・中小企業が持つ専門性が競争優位となる可能性がある。しかし参入には認証取得、現地パートナーとの連携、物流体制の整備などの課題が存在する。
第二のテーマでは、ロシアを拠点としていた企業が中央アジア・コーカサス地域への事業転換を検討している。特にウズベキスタンを重点国として現地調査を実施し、医療・ヘルスケア分野と食品分野での展開可能性を詳細に分析している。ウズベキスタンでは日本の技術や機械に対する信頼が厚く、政府の産業政策とも合致するため、日本企業にとって有望な市場となっている。
食品分野では、日本の加工機械技術とウズベキスタンの農産物を組み合わせたバリューチェーンの構築が提案されている。現地の果樹やナッツ類は高品質であるが、加工技術や品質管理体制が不十分なため、日本の技術導入により付加価値を高め、日本市場への輸出を実現する構想である。
