令和4年度コンテンツ海外展開促進事業アニメーションのデジタル制作に対応した効果的な人材育成に関する調査報告書
報告書概要
この報告は、アニメーションのデジタル制作に対応した効果的な人材育成について書かれた報告書である。一般社団法人日本動画協会が令和4年度コンテンツ海外展開促進事業として実施した調査の結果をまとめたものである。
日本のアニメーション産業は2000年前後から仕上や撮影工程のデジタル化が進み、3DCGの導入も始まった。しかし海外のフル3DCG制作とは異なり、2Dのセルルック表現を特徴とする独自の発展を遂げている。現在は2D作画のデジタル化が進行し、2D制作と3DCG制作を組み合わせるハイブリッド制作が増加している。アニメーション制作を行う3DCG会社は2016年の89社から2020年に206社へと大幅に増加し、制作手法の多様化が急速に進んでいる。
このような状況において、デジタル制作に対応できる人材や多様化する制作方法および工程管理に柔軟に対応する人材の需要が高まっている。本事業は、アニメーションのデジタル制作に不可欠な共通知識を習得できる効果的な教育方法の調査・検討・試行・評価を目的として実施された。
調査は東京工科大学の三上浩司教授を委員長とする検討委員会を設置し、東映アニメーション、オー・エル・エム、ウィットスタジオ、グラフィニカなど主要制作会社の専門家や大学教授らが参画した。調査方法は業界関係者へのヒアリングや実践講座による検証を通じて行われた。
デジタル化の課題として、基礎的なPCスキルや作画アプリの習熟、納品基準の遵守などの自己要因と、制作フローの構築方法や報酬制度、スケジュール立案などの外部要因が複雑に絡み合っていることが明らかになった。また業務アプリの機能不足や互換性の問題、日本市場の規模が小さいためメーカー支援が限定的である実態も浮き彫りになった。
報告書では、アニメーターのデジタル対応は急速に進展しているものの、移行や教育にかかる時間と費用のコストが制作会社にとって負担となっており、継続的な公的支援の必要性が指摘されている。さらに今後はプリビジュアライゼーション技術やエンジニア教育の充実が急務であると提言されている。
