令和4年度産業経済研究委託事業 信頼性のあるサステナビリティ情報の効率的な収集・集計・開示の在り方に関する調査 報告書
報告書概要
この報告は、サステナビリティ情報の効率的な収集・集計・開示に関する日本企業の課題と解決策について書かれた調査報告書である。近年、投資家のサステナビリティ情報に対するニーズが高まり、IFRS財団による国際サステナビリティ基準審議会の設立や、欧州のCSRD、日本における有価証券報告書へのサステナビリティ情報記載義務化など、グローバルレベルで開示制度の整備が進んでいる。企業は経営の中核にサステナビリティを位置付け、持続可能性を高めることが求められているが、財務情報とサステナビリティ情報の同時開示において、日本企業は約2.9か月の開示ギャップを抱えており、欧州企業の0.03か月と比較して大きな遅れが生じている。日本企業が直面する主要課題として、経営層のサステナビリティに対する理解不足、必要データの特定困難、データ収集・集計体制の未整備が挙げられる。特に、エクセル等の手作業による非効率的なデータ収集、バリューチェーン全体にわたる広範囲なデータ収集の困難さ、自動化・デジタル化の遅れ、信頼性確保の課題が深刻である。調査では、英国、フランス、ドイツなど欧州企業を対象として、CDP気候Aリスト企業やTCFD賛同企業を中心に、サステナビリティデータの収集・集計プロセスの実態と企業戦略策定への活用方法を分析した。欧州企業からの示唆として、外部システムプロバイダーの活用による計算自動化、請求書電子化等の入力ポイントでのデジタル化、サステナビリティと財務の両方の能力を備えた専門人材の配置、グリーンとデジタルの総合戦略の重要性が明らかになった。また、欧州では企業サステナビリティ報告指令による規制的推進力により、取締役・経営陣のサステナビリティコンピテンシー向上、経営判断基準へのサステナビリティリスク反映、ステークホルダーエンゲージメントの促進が急速に進展している。
