令和4年度無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(データに基づく最適なモビリティサービスの社会実装に向けた事前調査等事業)報告書
報告書概要
この報告は、データに基づく最適なモビリティサービスの社会実装に向けた事前調査等事業について書かれた報告書である。本事業は、経済産業省と国土交通省が連携して推進するスマートモビリティチャレンジの一環として、少子高齢化や人口集中による社会課題に対し、MaaSと呼ばれる新たなモビリティサービスを通じた移動課題の解決と地域活性化を目指している。報告書では、地域社会全体を俯瞰し、データ解析による客観的な現状把握の重要性を強調し、人・物・情報の流れと地域社会の様々な要因を組み合わせて活動情報を可視化することで、最適なモビリティサービスのあり方を検討する手法が示されている。
事業の主要な取り組みとして、まずデータ活用ワークショップが開催され、自治体職員18名と民間企業14名が参加して、実在する自治体を設定したグループワークが実施された。ワークショップでは、データカードと課題カードを用いた現場業務に近いリアルな演習を通じて、市民ペルソナの幸福度向上を目指した企画立案が行われた。参加者からは、データ活用の基礎知識や企画立案手法について高い評価が得られ、今後の現場レベルでのアクション促進への貢献が確認された。
また、福岡県宗像市の「のるーと宗像」事例調査では、既存バス路線の代替交通手段として導入されたAIオンデマンドバスの運行データを分析し、地域特性や需要を捉えた仮説構築が実施された。日の里地区における分析では、リピーター特性やキャンセル傾向、エリア別の利用パターンなどが詳細に検討され、宗像医師会病院や宗像ユリックスなどの施設利用推移データも活用された。データ分析の結果、地域住民の移動ニーズの多様性と、施設利用パターンの時系列変化が明らかとなり、持続可能なモビリティサービス設計への示唆が得られた。
最後に開催されたスマートモビリティチャレンジ地域シンポジウムでは、基調講演や取組報告、パネルディスカッションを通じて、新たなモビリティサービスの可能性について議論が行われた。参加者の76.6%が次世代モビリティの検討または取組に関わっており、補助金の充実やセミナー等の情報提供、マッチング機会の創出などのサポートが求められていることが明らかとなった。参加者からは、データ共有化による共創の仕組み、自治体首長のリーダーシップ、地域実態に応じたモビリティサービス導入の重要性などが指摘され、まちづくりと一体となった持続可能なモビリティサービスの必要性が確認された。
