令和4年度製造基盤技術実態等調査(グリーンマテリアル産業への転換を通じた競争力強化に関する調査)
報告書概要
この報告は、グリーンマテリアル産業への転換を通じた競争力強化に関する調査について書かれた報告書である。我が国は2050年カーボンニュートラル目標を宣言し、2030年度には2013年度比で46%の温室効果ガス削減を目指している。エネルギー多消費産業である素材産業がカーボンニュートラルに対応するためには生産プロセスの転換が必要であり、膨大な設備投資が求められている。
本調査では、世界の石油化学製品の生産や需要に関わる市場環境を把握することを目的として、日本の主要経済関係国である中国、韓国、台湾、インド、欧州、米国に加え、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、中東各国を対象とした。調査対象化学品は、基礎化学品であるエチレンと、その主要誘導品であるポリエチレン、スチレンモノマー、エチレングリコール、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンの計6品目とした。
化学品の輸出入量については国連商品貿易統計データベースから取得し、生産量については各国の業界団体の公表情報を活用した。ただし、情報を公開していない業界団体も存在するため、米国やアジアの一部、中東各国については有償の調査会社データの活用が必要である。エチレンの生産能力については、2017年までは経済産業省の調査結果を採用し、2018年以降は各種情報源を参考に新増設実績を見積もって推算した。
調査の結果、中国と米国がエチレン供給で大きな伸びを示しており、韓国もシェアを拡大している。中国は2021年にエチレン生産能力が年間3945万トンに達し、世界の石油化学産業における地位を強化している。一方、欧州は供給シェアが減少傾向にあるが、温室効果ガス対策で急激な変化を見せている。
調査における課題として、生産能力の把握には新増設だけでなく設備廃棄も含めた包括的な情報が必要であることが判明した。また、産業があまり発展していない国や地域では情報公開が十分でないため、有償情報の活用が望ましいとされている。今後の政策的議論の基礎資料として、継続的な市場環境の把握が重要である。